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雨が降るから

 そう、彼女は言った。
 夏のよく晴れた日だった。
 青い空に、白い雲が流れ、乾いた風が吹き抜けていく。
「雨なんて、降りそうにないよ?」
 そう、僕は言った。
 すると、彼女は少し困ったように微笑む。
 強い日差しが照りつけ、長く艶やかな黒髪が静かに揺れた。
「もう、帰ろう」
「どうして? まだ、時間はあるのに」
「雨が降るから」
 彼女はもう一度、先ほどと同じ言葉を口にした。
 どうして、そんなことを言うのだろう。
 雨なんて降りそうもないのに……。
「ねぇ、帰ろう? お家に帰ろう?」
 切なげに訴える彼女に、僕はどう答えていいのかわからなくなる。
 帰る家などありはしない。帰る場所など、どこにもありはしないのだから。
「雨が降るから、雨が降るから、雨が降るから……」
 まるで呪文のように呟き続ける彼女。
 雨なんて降らない、僕はそう口にしようとした――

 ポツリ、と頬に滴がぶつかる感触。
 雨が降ってきたのだろうか?

 思わず空を見上げようとして、妙だ、と思った。
 僕はずっと彼女を見ていたのに、どうして頬に雨粒が当たるのだろう。

 考えている間にも、ポツリ、ポツリ、と頬に滴がぶつかっていく。

 ああ……何にしても雨が降ってきたのだ。
 彼女の言うとおりに、雨が……。

「雨が……」

 僕は、空を見上げた。
 そこには、青く晴れ渡る空が広がっていた。

 けれど、雨は降る。僕の頬を濡らしていく。

「うくっ……」
 目の前が急に暗くなり、そして明るくなる。
 途端に重苦しくなる頭と体。
 胸を誰かに押されているような息苦しさを感じながら、徐々に視界が鮮明になっていく。

「ああ……」

 そして、僕は全てを理解する。
 眼前には、彼女の顔があった。
 美しさと優しさと儚さを備えた彼女の顔が。

 ポツリ、ポツリ、ポツリ、と血を零し、僕の頬を濡らしていく。

「雨が降るから」
 そう、彼女が言った。
 もう、死んでいる彼女が言った。
 これから死んでいく僕に言った。

「ねぇ、帰ろう? お家に帰ろう?」
 ああ、そうだね……僕らは帰るべきだったんだ……
 帰りたい。帰りたいね。
 だけれど、帰る家などありはしない。帰る場所など、もうどこにもありはしない。

「雨が降るから」

 それが、僕らが家に帰るための合図だった。

 空は晴れている。雨は降っている。

 こんな時、どうすればいいのだろう?

 そんなことを考えながら、僕はゆっくりと死んでいく。

 雨が降っている。

 ただ、雨だけが……。
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でもパンツはもっと好き。パンツ!

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って言わんでもわかるっちゅーねん!

お仕事募集中です。来るのかしら。
シナリオ・スクリプト・作詞・雑用などなど~
ご用命がありましたらよろしくお願いします。
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■主なお仕事履歴。
・2001~2009年。
 銀色~完全版~(ねこねこソフト)
 ねこねこファンディスク(ねこねこソフト)
 みずいろDC版(NECインターチャネル)
 みずいろPS2版(NECインターチャネル)
 朱-Aka-(ねこねこソフト)
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